食べるマニア 第②話

[小説]短編

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井上春香は、人が食事の際、口を開ける瞬間がたまらない性癖の女だった。

学生時代は、地味過ぎるが故、あまり友達が出来ず、つまらない青春時代を送ってきた。

彼氏が出来たのは、高校三年の冬。地味な男だった。名前も忘れるくらいの地味な男で、バージンをその男に捧げた。付き合って3カ月足らずで別れてしまった。初エッチのことも忘れるくらいの地味な思い出だ。

そんな地味な春香にようやく春が来た。同じ趣味と言うか、同じ性癖を持つ藤沢と言う彼が出来て、二人は快楽の道を歩んでいった。

春香はアパートに一人暮らしをしていた為、藤沢と同棲することになった。

仕事が終わると、二人はアパートへ帰る。春香は昔から料理が上手だった為、藤沢に手料理を振る舞う。

まず、藤沢が先にご飯を食べる。ゆっくり口を開き、よく噛み、飲み込む。

藤沢はじっと春香を見つめながら、米や副菜などを口に運ぶ。時に唾液を垂らし、ゆっくりと口を開き、その姿を春香に見せつける。

次に春香がご飯を食べる。決まって、その時には藤沢は全裸になる。自分の肉棒を握りしめ、自慰行為を始める。

春香は興奮しながら、食事を進める。熱いおかずをフーフーしながら、自分の身体も火照り、食事どころではなくなるが、これはあくまで【前菜】。

春香が食事を終えると、藤沢は春香を抱きしめる。春香の服を脱がせながら、まだ春香の口の中には食べ物が入ってるのにも関わらず、キスをし始める。

舌と舌が交差する。春香の口から噛み砕いた物が床にボタボタと落ちる。それを見ながら、藤沢は余計に興奮しながら、自分の肉棒を春香の股間に押し付ける。そのまま、風呂に向かう。

シャワーを流し、春香も全裸になり、二人は抱き合いながら、ずっとキスをしつ続ける。

『お前を誰にも渡さない』

キスをしながら、藤沢は甘く囁く。

『もちろん。この身体は全部、あなただけのものだか、好きにして』

春香は藤沢の肉棒を握り、後ろを向き、ゆっくりと合体する。

激しく腰を振る藤沢。

ヨダレを垂らしながら、春香は声を上げる。

この行為が毎夜続く。

隣の部屋で一人で興奮している女がいた。春香の友達、優子だった。

優子の趣味は【盗聴】だった。

こっそり内緒で、春香のアパートの隣の部屋に住んでいる。

二人がセックスしている声をイヤホンで聴き、一人で興奮しながら自慰行為をする。彼氏はいるが飽きたらず、最近になって新しい趣味を見つけたのだ。

(なんて、エロい2人なの)

優子は時々、彼氏を部屋に連れ込み、春香たちの様子を聴きながら、自身もセックスする。優子の彼は半ば呆れ気味だったが、優子が異常なまでに興奮するので、よしとしていた。

ある日の事だった。春香が仕事を終えて、立ち上がると、上司の中田が寄ってきた。

『井上さん、今日は高岡君の送別会だが、来れそうかな?君だけなんだ、参加の有無が未確認のは』

と、シルバーグレーの優しそうな上司は言う。

『あ、高岡さん今月末で退職でしたね』

ふと、一時間前の藤沢のラインを思い出した。

【今日は同期の高岡の送別会に参加するから、春香も参加してね】と。

『参加します。場所どこでしたっけ?』

上司に場所を聞き、会社から最寄りの居酒屋に向かった。居酒屋内では、すでに12〜3人の職場の同僚が小上がりの席に座っていた。春香は一抹の不安があった。

こんなに大勢の人間と食事をしたことがなかった。

今の職場に就いてから、歓送迎会に参加してこなかった。地味過ぎるが故の性格なのか、引っ込み思案な性格を今更、自分で後悔した。

イコール、それは彼氏がいる藤沢を含む大人数の前で、春香は通常より更にマシマシの感じで、興奮をしてしまうということを意味する。

席に座り、上司からの一言があり、乾杯の発声があり、ひとしきりの歓談まではクリア出来た。問題はここからだ。

酔った勢いで、同僚の女が箸でイカリングを持ち、藤沢に、

『藤沢さん、あーんして』

と、誘導してきた。

酔ってた藤沢は、対面で座っていた春香をチラ見して、不敵な笑みを浮かべた。

春香の心に嫉妬心はなかった。逆に言えば、これは藤沢のプレイのMAXだと確信した。

(私を興奮させるのね)

春香はそう思うと、すでに股間はビチョビチョに濡れていた。

春香の目の前で、藤沢が違う女に食べ物を運ばせ、口を大きく開ける。その数秒、ずっと藤沢は春香を見つめていた。

(凄い‥興奮しちゃう)

大人数の中、藤沢は口に運ばれてきたイカリングをゆっくり、ゆっくり噛んだ。唾液を春香に見せるように、口から垂らした。

その唾液を春香は飲み込みたい衝動に駆られる。普段、酒をあまり飲まない為か、乾杯の時に飲んだ生ビールを半分も飲んでないのに、すっかり酔いが回ってしまった。

周りから、

『井上さん、顔真っ赤だけど、大丈夫?』

と、心配されるが、それは酔ってるからではない。人生で一番興奮してる故の顔面が真っ赤になっているだけだった。

もちろん、藤沢と春香が付き合っていることは誰にも知られていない。

ややイケメンの藤沢は、職場の女性スタッフにはウケは良かった為、何人もの女性スタッフが箸でイカリングやタコ唐を口に運ぶ。ケラケラと笑う女性スタッフとは裏腹に春香の身体は火照り続け、乳首は立ち、下半身は大洪水。

もうダメと思った春香は、トイレへ向かった。

と、同時に藤沢もほくそ笑みながら、トイレへ向かう。

女子トイレから出る春香を藤沢は男子トイレの個室へ誘導した。そのタイミングは絶妙で、誰にも見られないタイミングだった。

二人は無言で抱き合い、激しくキスをした。何分も絶え間無く‥

運良くと言うべきか、居酒屋は平日だった為、春香の職場スタッフ以外の客は見当たらない。いわば、貸し切り状態だった。

『意地悪‥』

キスをしながら、春香は言う。

『興奮したろ?』

藤沢は、春香のスカートをめくり上げながら言う。

『アパート着いてから、たくさん挿れて』

珍しく春香は挿入を拒否した。

『お前が欲しい。今すぐ‥』

『だーめ』

春香は藤沢を優しく手で押しのけ、トイレから出た。席に戻ると、周りがただ心配してくれた。バレてはいなかった。藤沢が戻ると、長いトイレだったなとイジラレる。

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