花魁お楼の生涯~愛に生きた女 第⑤話

この物語はフィクションです。登場する人物、団体名等、名称は実在のものとは一切関係ありません

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新之助と与一郎

「このことは3人だけの内密に・・・頼んだよ」

お楼と与一郎はただ黙って聞いていた。

「折角 私の嫁にと思ったのに残念だったよ 私は裏切りが絶対許せない性質だから」

そういうと不気味な薄笑いを浮かべた。

お楼はこんな相手とは知らずなんてことをしたのかと新之助とのあの晩のことを悔いた。

同時に自身の浅はかさに愛想が付いた。

帰宅後 お楼は部屋に閉じこもる。

与一郎も床に就いた。

各々の心の中に葛藤と失望感が渦巻いた。

後日 稲生様から今回の話は無かったことにと直正、雪江夫妻に

事情は伝えられず断りの申し出があった。

勿論、伯父 稲生さえも新之助の性癖 人格には気が付かず 新之助に言われるがまま断りの話を受け入れ伝えただけだった。

「お楼のどこが悪かったのか」

一人つぶやく直正

力落とす雪江

二人の間に静かな空気が流れて行った。

一人娘の縁談をこのような形で終わろうものなんて・・・

このことが世間に分かったらと思うといたたまれなくなった両親。

一方 奉公人の与一郎は・・・・

「奉公人として農民の私を受け入れてくださったご主人様になんと申し開きしていいのか

」と欲情に負けて大切なお嬢様をキズものにした事実は消せぬこと。

身分の違いは分かってはいてもほのかに沸き起こるお楼への愛情と愛欲が抑えきれず

今のままでは・・・と 困窮した家族へ自分が頑張ることで少しでも助けになればと

純粋に想いお勤めを全うしようと与一郎はもがき苦しんだがご主人さまへの最大の裏切りを償うにはお暇とらせていただくことしかないと・・この事しか思いつかなかった。

そして直正に直訴した。

「私はご主人様に拾っていただき目をかけていただきとても感謝し今まで勤めてまいりましたが里に残した家族のもとへ帰ろうと思います。父の体の具合が重わしくなく申し訳ございません」

「何を言うのか?私にできることだったら何でも力になるぞ」

そう言って優しく声かけされればされるほど 自分を責め お楼へ想いも強くなっていった。

お楼との別れ決断

夕暮れの神社の境内・・・・

お楼を呼んだ。

そしてお楼にも別れを伝えた。

「お嬢様 いくらお嬢様を助けようとした私とはいえ あの男の言いなりになって

汚れないお嬢様の体に触れた私・・・申し訳ございません。今後はこのお屋敷を出て

故郷に帰ろうと思います」

「与一郎さん?何を言うのですか?私をあの者から救ってくださったのですよ!

あの出来事は一生お墓まで持っていけばいいことなのです。私と与一郎さんとあの男だけが知っていることですから」

そう言いながら何度も説得するお楼に涙が出た与一郎。

泣きながら与一郎に寄り添ったお楼

軟らかなお楼の体 いじらしい表情 与一郎 男として 最後に・・・

「お嬢様 本当に申し訳ございませんでした」

本来なら責任を取るべき立場なのに無能な自分ゆえ何も出来ないのが実態だった。

「与一郎さん ホントに出て行かれるのですか?あてはあるのでしょうか?」

「家に帰ってからまた考えます。また私を奉公人として面倒見てくださる主人が

現れることを祈ってください」

「与一郎さん 私たちまたどこかでお会い出来ますでしょうか?」

「ご縁がありましたら」

先日の出来事を思い出しながら与一郎の心はお楼への愛情がほのかに「本物」

だと確信していた。

最後に・・・

「お嬢様 もう一度だけ 貴方に触れてもよろしいですか?」

「え・・・・っ?」

「私の腕の中で今一度お嬢様を抱きしめたいのです」

「与一郎さん・・」

か細く小さな体のお楼をぐっと引きよせ無言のまま抱きしめた与一郎。

お楼の首筋に一滴の水滴が落ちた。  

与一郎涙する。

明朝 静かに屋敷を後にした与一郎だった。

陰で見送るお楼の胸は猛烈に熱く引き裂かれる想いだった。

お楼 失意喪失 床に伏せた

鬼のような新之助の仕打ちに傷つき 責任感じて出て行った奉公人与一郎

破談になったことへのショックで落ち込んだ母雪江

実際は何が理由だったのか稲生に尋ねるもののそれもわからないままだった。

ただ ひとつ言えることは寂しい生い立ちによって培われた新之助のねじ曲がった

人格が起こした結果に過ぎなかった。

しか新之助の異常性は誰も知る由はなかった。

お楼と与一郎以外は。

次第に雪江も病に伏せ 父直正は後継ぎを得られぬもどかしさに次第にお楼を

厳しく責めるようになってきた。

新之助と出会うまでは普通に温かな我が家だった。

本来ならそばにいてほしかった勇敢な奉公人与一郎

病の母上。

辛く責めるすっかり変わってしまった父上。

婿養子を取ろうにも一人娘のお楼がこのような状態ではどうすることもできない

次第にお家に影が出てきたのは言うまでもなかった・・・

季節はすっかり変わり秋になっていた。

雪江の助言で気分転換に町でもいっておいきと促され

久し振りにおしゃれを施してひとり町へ出た。

一人ゆっくりとゆっくりと歩んだ。

鼻緒が切れても助けてくれる人はもういない。

あてもなくひたすら歩くお楼

歌舞伎小屋周辺に差し掛かったところ ガヤガヤと人の群れが見えた。

「なにかしら?」気になってお楼も一緒に覗いてみた。

そこには豪華絢爛 眩く神々しい太夫の姿があった。

周りの人々に尋ねたら時々花魁が遊郭の外へ出て歌舞伎やお相撲見物など

行っていたと聞き驚いた。

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40代主婦 趣味はいたって「妄想」人生半分は妄想のエロで成り立ってきたと言っても過言じゃない!というくらい自負。なんだかんだ言って私は筋金入りの変態と気が付いてきた今日この頃・・・。