幼馴染は変態姉弟!巨根童貞の受難 第①話

[小説]短編

 なんでこんなことになったんだろう・・・・
 1時間ほど前の自分の選択を、隼人は呪わずにはいられなかった。

「あれ?お前今帰り?」
 聞き覚えのある声に、隼人は足を止めて振り返った。およそ20メートル先の、幹線道路と住宅街を走る生活道路の交差点、そのど真ん中に、幼馴染の貴也の姿はあった。隼人は強烈な日差しに目を細めた。逆光で顔が翳り、貴也の表情はよく伺えなかったが、その立ち姿、仕草、雰囲気、声音で、彼の機嫌が良いことは分かった。
「珍しいな。早いじゃん。練習ないの?」
 案の条、貴也は足早に隼人のそばまで駆け寄り、肩に腕を乗せてニッと笑った。蒸し暑い午後三時半の路上で、汗の一粒も浮かべず爽やかに笑う男の顔を見て、隼人は軽く溜め息を吐いた。
「今日は監督もコーチも急に出られなくなって・・・・って、お前、何?家、向こうだろ。なんで付いてくるの」
「オフなんだろ?久々に遊ぼうぜ」
「は?家に来んの?知ってんだろ、うるせえチビどもいっぱいいるぞ。それに、俺帰ったら自主練するし」
「じゃあ、俺ん家来いよ」
 貴也はそう言うと踵を返し、元来た道をさっさと歩いて行った。相変わらず人の話を聞かない。自分勝手で強引で、マイペース。世の中何でも自分の思い通りにいくと思っているような、嫌な奴。なのに、結局はその嫌な奴の背中を追って道を引き戻す自分に、隼人はこの日2度目の溜め息を吐き、またひとつ額から流れ落ちる汗を拭った。

 隼人と貴也は赤ん坊の頃からの付き合いだった。母親同士が親友で、保育園・小学校・中学校とずっと一緒だった。特に小学生の頃は、2人とも地域の少年団に入り、野球に明け暮れる日々を過ごし、登下校も何もかも常に一緒だった。友達、仲間というよりは家族に近い存在かもしれない。いや、だった、というべきか。中学で貴也は野球をやめ、隼人は硬式シニアのチームに入った。そのあたりから、少しずつ顔を合わせる時間がなくなっていった。そして、貴也が県でも有数の進学校に進み、隼人が野球部推薦で地元の強豪校に進学すると、もうまったくといっていいほど会うことはなくなった。
 自宅から300メートルもない近距離の住宅区域、そのなかの見慣れた洋風の一戸建ての、そのまた見慣れたはずの8帖の一室。白のレンガ風の壁紙に、落ち着いたモノトーンで統一されたインテリア。エアコンまでメタリックなダークグレーで、とにかくおしゃれだ。貴也の母親はアパレルショップの店長をしていて、隼人の母が言うには、昔から服からインテリアに至るまでこだわりが強いらしい。隼人はMacしか置いていないデスクの前に立ち、大きな窓枠に立て掛けられている写真立てを眺めるともなく眺めた。
「変わってない、っちゃ、変わってないんだけどな・・・・」
 2人が小学6年生の時、地区大会で優勝した記念の写真。優勝旗を掲げ二カッと笑う自分の横で、トロフィーと最優秀選手賞の盾を抱える貴也の、眩しいのか大きい目を細め眉を寄せた難しい顔に、自然と昔のことが思い出された。エースピッチャーとしていつも堂々とマウンドに立ち、自信に満ちていた貴也。ただでさえ人目を引く容姿をしていた彼は、いつでもどこでも注目の的だった。監督やコーチ、母集団の人々は、貴也のセンスや才能を口々に褒めていたが、彼が陰で人一倍努力していたことを、隼人だけは知っていた。
「クーラー効いてきたか?何、立ってないで座っとけよ」
 声とともに勢いよくウッド調のドアが開いて、手に氷とレモンとミントの入ったピッチャーとグラスを持った貴也が入って来た。
「ああ、うん」
 そう頷くと、隼人はようやく担いでいたエナメルバッグを下ろし、ひやりと冷たい感触のするラグに座った。足先に何かが当たり、ローテーブルの下を覗くと、腹筋ローラーのような器具が何個か転がっていた。
「お前さ、今って、何かやってんの?」
「何かって何?」
「中学ん時陸部の助っ人とかで、中体連に出てただろ。高校では完全に帰宅部か?」
「いや。入る気なかったけど、あんまりうるせーから、サッカー部入ったよ。うちのサッカー部超弱いらしい」
 貴也はつまらなそうに言うと、大きめのグラスに水をドバドバと注いだ。
「サッカー?なんでサッカー?っていうか、なんでお前、野球やんねーの」
 その言葉に、貴也はグラスを持つ手を一瞬止めて、じっと隼人の顔を見たかと思うと、ふっと笑い、「俺、そんな坊主嫌だからさ。だっせえだろ。まあ、お前は似合ってていいじゃねーの」とそっぽを向いた。なんとなく、隼人ははぐらかされたような気がしたが、何も返せなかった。
「なあ、そんなことよりVRソフト何がいい?暑いし、ホラー系?それともエロゲーがいい?」
「は?エロゲー?すんの?お前」
 隼人の意外そうな口ぶりに、「あんましねーよ。だって、実際やる方がいいに決まってんだろ。いとこの春兄がいらねえからって持ってきたんだよ」と貴也は言った。そして何か思いついたように顔を上げ、「なあなあ、お前ってさあ。童貞?童貞だよな?いつも何で抜いてんの?やっぱエロ動画?AV?」と捲くし立てた。
「は?な、ど、どうて、いって、お前何の話だよ!」
「何って、ナニの話だろ。別にいいだろ、童貞でも。恥ずかしがんなよ。男同士だろ」
 そういう問題じゃねえよ!隼人は心の中で叫んだ。その時、テーブルに置いてあった貴也のiPhoneの着信音が鳴り、貴也は煩わしそうにそれを取って、少しの間の後電話に出た。隼人は助かったと思いホッと息を吐いたが、電話に出た貴也の顔はみるみる険しいものになっていった。形の良い眉をぐっと寄せ、「はあ?無理だって言っただろ。用が出来たんだよ!は?お前なあ、女じゃねえよ、男だ、男、友達だって・・・・」と語気を荒げたかと思うと、貴也は項垂れるように首を傾げ、「まじかよ」と呟いた。
「な、何だよ・・・・彼女か?」
「・・・・彼女じゃねえよ。でも、なんか、もうこっち来るってきかねーから、悪い、ちょっと俺出てくっけど、すぐ戻ってくるから」
「いや、それなら、俺、帰るし」
「すぐだから、いいって。じゃあ勝手になんか始めてろよ」
 貴也はそう言い捨てると、さっと部屋を出て行き、バタバタと階段を降りていった。
「何なんだよ、あいつは・・・・」

 貴也が出て行って5分、いや10分だったかもしれない。隼人には貴也を待つ、その間の時間の感覚が曖昧だった。また、あれやこれやと昔のことなどを考えたせいで、ずいぶん長く感じられたのかもしれない。視線は窓際の小ざっぱりとしたデスク周りから、見たこともないような参考書が並んだ本棚、テレビボードへと移り、最後、白とグレーで統一されたシングルベッドに行き着くと、隼人は何だか耐えきれなくなって、部屋を出た。階段を降りようとしたその時、1階から上がってくる気配に足を止めると、上がってきたのは貴也その人ではなかった。
「たっだいまー!あれ、貴也じゃない・・・・あんた、あ!隼人?隼人じゃん!」
「み、美也姉?」
「やだー何、ちょっと見ない間にまたでかくなっちゃってー、すごーい、ね、ね、何センチあんの?」
 貴也の3歳上の姉・美也子は、隼人のすぐ前に来ると、腕やら肩やら撫で回し、バンバンと叩いた。肩が剥き出しのふわふわした透け素材の黒いトップスに、白デニムのミニスカート姿という、相手の肌面積の多さと、テンションと、いきなりの距離の近さに、隼人は面食らった。
「え?ひゃ、188くらい・・・・」
「マジ?今17でしょ?まだまだ伸びるじゃん、やばーい。貴也も大きいけど、あいつほっそいからさー。って、貴也は?中?隼人もう帰るの?」
 確か大学近くの女子寮に居を移したらしいが、たまに帰省するのだろう。隼人は数年ぶりに会う美也子からそっと距離を取り、貴也は急用で出ていったことと、もう帰ることを告げ、再び階段を降りようと手すりに手を掛けた。しかし、その手を、正確には腕を、美也子に掴まれ、思いっきりよく引っ張られた。
「えー久し振りに会ったのに冷たい!ねえ、暇なんでしょ、せっかくだし、もっといなよ」
「い、いや、俺、別に暇じゃな」
「そうそう、お土産あるから、駅ナカの最新スイーツ!食べていきなよ、あ、こっち、私の部屋。まだそのままなの」
 隼人の腕を取ったまま、美也子は貴也の部屋の隣のドアを開けると、「あーやだ、あつーい」と言って窓に寄り、ピンク色のカーテンを閉めた。なんでこの姉弟はこうも人の話を聞かず、強引なんだろう。昔からそうだった。地元でも評判の美形姉弟、その性格の難点を知るのは一体何人いるのか。蒸し暑く薄暗い部屋に半分身体を突っ込んだ状態で、隼人はすぐに吹き出し始めた汗を拭うふりをして、今日3度目となる溜め息を吐いた。
「いや、美也姉、俺帰るから」
「今日も暑いよねー、隼人すごい汗かいてる。昔っから汗っかきよね。夏でもないのに汗かいて、この時期は水被ったのってくらい濡れてて」
 当時を思い出したのか、屈託なく笑うと、美也子は着ていた薄手のトップスをさっと脱いでベッドに放った。トップスから少し見えていた水着のようなものは下着、つまりブラジャーだった。
「み、美也姉?ちょ、何」
「暑いから、隼人も脱ぎなよ、ほら、汗だくじゃない」
 そう言いながら美也子は隼人の手を引っ張り、肩に下げていたバッグを取って適当に床へ置くと、カッターシャツの襟あたりに手をやった。避けようと後ろへ下がったところを、美也子の細い腕によって更に押され、隼人の巨体は情けなく壁際に追い詰めらた。
「な、何、何すんだよ!やめろ!」
 幼い頃の力関係は、こうして体格差がありありと明確になった今でも変わらないものなのか。隼人は精一杯睨みを利かせて腕を振り払ったつもりだったが、美也子はまったく動じず、「シャツの上からでもすごい、分かるね、この大胸筋の盛り上がりすごーい、腕の方もやばい」と、また自分の露わになった胸を押し当てて抱きついてきた。
「いーい匂い、私、こういう、スポーツしてる男の汗の匂いって大好きなの。昔はガキ臭いだけだったのに、もうこんな雄臭いなんて、おねーさん、なんか感動しちゃう」
「いや、意味わかんねーよ!」
 俺そんな汗臭いのか?と軽くショックを受けつつ、隼人は無理やり脱がされそうなカッターシャツの襟元を必死で押さえたが、美也子は上目遣いのまま笑みを浮かべて、「あんた、童貞?」と訊いてきた。
 何で同じ日に姉と弟の2人からこんなこと訊かれなきゃなんねーんだ!ふざけんな!と、隼人は心の中で絶叫し、「か、かんけーねーだろ」と睨んだ。
「じゃあ、ちょうどいいじゃない。好きな子とヤる時スムーズに出来た方があんただっていいでしょ?」
「す、好きな子、とか」
「それもいないの?ふーん、じゃ、なおさらいいじゃない。あー暑い。見て、私も汗やばい」
 美也子は長いストレートの髪を片方に寄せて流すと、ミニスカートを脱ぎ捨て、下着姿で隼人の身体に絡んできた。1分、いや1秒ごとに部屋の温度が上がっているような気がした。美也子は両腕を隼人の首に回し、背伸びして、「その人の匂いってね、ここ、ここが一番出てるのよ」と耳元で囁き、左の耳の裏を嗅いだあと、ぺろりと舐めた。
「なっ、ちょっ、と」
「もっと濃い匂いのところもあるけど、ね。ふふ、汗すごい」
 隼人がオタオタしている間に、美也子はベルトを外し、スラックスを脱がしにかかっていた。さすがにマズイと脳味噌の警告音が鳴り出したため、隼人は腕に力を入れ、美也子の身体をどかせようとしたが、次の瞬間、剥き出しとなった自分の膝に、生温く湿った感触が覆いかぶさり、その未知の感覚に、身体が一時硬直してしまった。
「はぁ・・・・うん、足の筋肉もいいね。かたぁい・・・・この大腿骨がぐっと太い感じとか、超好み。かなり鍛えてるね」
 美也子は隼人の足を跨ぎ、膝頭辺りに自分の局部を当てて、「私、足フェチなの。ほら、んっ、ここも、濡れちゃってきた」と言うと、シャツの下から手を入れ、汗でべたべたの腹や胸を撫でた。暑すぎて死にそうだ。隼人は急に身体中の力が抜け、気付いた時にはその場にしゃがみ込んでいた。いつの間にかシャツは全開で、いつの間にかぷるぷると揺れる剥き出しの乳房が汗だくの胸に押しつけられ、首や頬に細い指先が這い回っている。唇にものすごく柔らかいものが当たり、それがキスだと脳が判断した時には、熱く滑った舌が侵入していた。
「?!」
 ねちゃりとした湿った音がし始めて、隼人の頭は沸騰寸前に追いやられた。汗が、止まらない。頭も、胸も腹も、手も、足も、全身が熱くてびしょ濡れ状態だが、何より美也子の陰部のあたっていた膝が燃えるように熱かった。美也子は唇を離すと、うっとりした顔つきで、自分の唇を舐め、腰を浮かすようにして自分の穿いていた透け素材のひもみたいなパンツに手を差し入れ、くちゅくちゅと音をさせた。スケスケのせいで指の動きから陰毛から丸見えだった。こんな、何の保護にもなっていないパンツがあっていいものか。
「気になる?隼人も触っていいよ?」
 やばいやばいやばい。いや、なんでこんなことになってんだ?ていうか、貴也は?遅くないか?そうだ、あいつ、今、彼女と会ってるんだ、なら、もうしばらくは帰ってこないのか・・・・
 隼人は沸騰する頭の片隅で、どこか冷静に、先ほど見た幼馴染の端正な横顔を思い浮かべ、そんなことを考えていた。

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