自己拘束で破滅を望む女

この物語はフィクションです。登場する人物、団体名等、名称は実在のものとは一切関係ありません

 女社長 片岡めぐみ(28)の事情

「明日はお休みですが、どうしますか? このまま直帰しますか、社長?」
 取引先との会合の帰りの車の中で秘書を兼ねた運転手がそう尋ねてくる。。
「いえ……一度会社に帰って。それで貴方も今日はあがっていいわ」
「わかりました」
 いつもと変わらぬ返事を返す。
 そろそろ『なぜ社長はいつも休みの前日は同じ指示を出すのだろう』と疑問に思っているだろうか?
 そこには私のとある『秘密』が関わっていた。

 * * *

「そろそろ、かな?」
 自分の机の上でモニターに目を落とし、社員の出勤状況を確認しながら呟いた。
 モニターの表示は『出勤人数0人』。
 私も含め一人として会社には残っていない事になる。
「ふふふ、それじゃあ始めましょうか……」
 私は自分にそう言い聞かせるように呟いてから、その場で来ていた服を脱ぎ始める。
 この瞬間はいつも慣れない。
 自分の会社で全裸になる解放感。
 もしも、何かの間違いでまだ誰かが残っていたらどうしようという不安。
 そんな変態的な事を実行してしまっているという背徳感。
 複雑な感情が私の胸に去来する。
 その胸の高鳴りを楽しみながら、私は自分の服を傍らのロッカーにしまい込む。
 これはまだほんの序の口。

 * * *

 私は社長室から一旦セキュリティを切り、オフィスに出た。
 普段は忙しなく人が行き交うオフィスを全裸で横切る。
 それだけでも心臓が破裂するくらい興奮する。
 普段は厳しい顔で上から指示する自分たちの社長がこんな変態行為をしていると知ったら社員たちはどう思うだろうか。
 軽蔑する? それとも興奮する?
 どちらだとしても今の私には麻薬のように快楽を呼び覚ます要素でしかない。
「あっ、んくっ……」
 我慢できずオフィスのど真ん中で秘所に指を伸ばし軽くこすり始める。
「ふ~……んっ!」
 目の前にあるのは確か田所係長の机。
 真面目な彼が私のこんな姿を見たらそれは幻滅する事だろう。
 軽蔑して、怒って、罵倒して、会社も辞めてしまうかもしれない。
「あっ……! ふぅ……ふぅ……」
 軽くイッたのを自覚して指を止めて息を整える。
 こんなところで満足してしまうわけにはいかない。
 私の目的地はまだまだ先だ。

 * * *

「ふふ、ここも久しぶりね……」
 薄暗い男子便所で一人呟く。
 そう、他でもないここが私の目的地。
 会社地下の人通りのないここが私の目指した場所だ。
 まずは再びセキュリティをオンにし、電気を消す。
 男子トイレの内側にセキュリティ操作の端末があるのは明らかに不自然だが、契約するときに無理やり設置させたものである。
 目立たないところに付いているので気付いているのは私か、清掃員のパートくらいなものだろう。
 こうして再びこのビルの中には誰一人いないという事になった。
 そして、私はそのまま一番奥の個室へ向かう。
 男子便所の冷えたタイルの感覚が足の裏を刺激し、それで私はまた興奮した。
 この個室の扉には『故障中』と書かれた小さなボード。
 それには構わず扉を開き中に入る。
 そこは一見して普通のトイレ。
 しかし、このトイレには秘密がある。
「それじゃあ……始めましょうか」
 そう言って私はトイレのタンクを開け、中から目的のものを取り出す。
 それは手錠だ。
「うふふ……」
 思わず漏れた笑いを抑え、私はそれを自分の足首と壁に設置してある手すりに掛ける。
 右足、左足。そして、右手、左手……。
 自分の意思で順に拘束していき、私はM字開脚の形で便座に固定された。
 そう、この個室は拘束具として機能するように設計されているのだ。
 そしてこの手錠も特別製。一度つけると24時間で自動で解除されるようにできている。
 逆に言えば私はこのトイレに24時間に渡って拘束され続けることになる。
 そして、この個室に鍵は付いていない……。
 誰かが気まぐれでこの扉を開くだけで私の人生は破滅する。
 そんな遊び。
 これが私の『秘密の趣味』だ。
「あ、ひっ……」
 今から明日の事を想像し、それだけで私は軽くイッた。

 * * *

「もう、朝か……」
 天井の上に人の気配を感じ、呟く。
 このトイレは地下にあるので日の光は入ってこないので未だ暗闇だが、その音で朝が来たことが分かった。
 もうここに籠って十時間ほど経っただろうか。
 ここからがこの遊びの本番だ。
 地下は倉庫になっており、古い資料などを保管する場所だ。
 ほとんどの社員にとってなじみがなく、滅多に訪れることの無い場所である。
 しかし、だからと言って絶対に誰も来ないと言い切れるほどでもなく、少なくとも二日に一回程度は人が入る。
 ただ、その中で男子トイレを使用する確率となるともっと低い。
 基本的に資料の持ち運びの短時間でしか訪れないからだ。
 だから、この遊びを始めてからもまだ一度もこのトイレに社員が入ってきたことは無い。
 だが、それでも『もしかしたら誰かが来るかもしれない』という期待だけで私の性器は期待でぬらぬらと濡れてくるのだった。
「んっ……!」
 またイッた。
 触れることなく破滅する想像だけでイク。
 私はどれだけ変態なんだろう。
 そんなことを考えながら余韻に浸っていた時、周囲がパッと明るくなる。
 トイレの外から物音がした。
「これはどこに運びますか?」
「奥の部屋。とりあえず今日は場所だけ覚えて」
 社員だ。
 思わずごくりと唾をのむ。
 大丈夫。そう、大丈夫。地下に社員が来た事は今までも何度かある。
 だが、まずトイレに入ることは無い。大丈夫なはず……。
 不安と恐怖で跳ね上がる鼓動を落ち着かせる。
 そんなことを考えながらも私の性器は一層愛液を分泌していた。
 ああ、期待してる、私。あの社員たちがこのトイレに入ってくることを……。
「あ、主任。ちょっとトイレいいですか」
「……ちょうどいいか。俺も行くわ」
 鼓動が跳ね上がる。
 落ち着け。動いてはいけない。音を立てるな。
 慌てなければ大丈夫。大丈夫なはず。
「地下のトイレ来るの初めてですね」
「確かに滅多に使わないな」
 キィという蝶番が軋む音と共に男二人の声が近づいてくる。
 私は微かに動く事すらしないように、呼吸すら止め気配を消す。
 大丈夫。大丈夫なはず。動かなければいいだけ。
「ふぅ~」
 長めの吐息と共にファスナーを上げる音が聞こえてくる。
 ほら、終わった。
 大丈夫だった。
 こんなところで失敗するわけがない。
 私が破滅するわけなんてないんだ。
「……ここ、故障中なんですね」

 ――嘘、でしょ?

「ん? ああ……あれ、そういえば前に来た時も故障中だったな、そこ。半年くらい前だぞ」
「へー、何なんですかね?」
 カツンカツンとゆっくりと足音が近づいてくる。

 まさか、開ける気!?
 やめてよ、冗談じゃない!
 許さない、絶対許さないから!
 開けたらクビにしてやる!
 だって、私は何もミスをしてない!
 私にには何の落ち度もない!
 今だって何も動いてないし、音も出してない!
 なのに、こんなのあり得ないでしょ!

「何か変な音がするな」
 ドア一枚を挟んですぐ近くで男の声がした。

 やめて……。
 やめてください。
 お願いします。何でもします!
 こんな、こんなつもりじゃ……!
 ごめんなさい! もう二度とこんな事しません!
 お願いです、神様……!
 助けて下さい!
 私が愚かでした!
 こんな馬鹿な事をして興奮しようとしていた私を許してください!
 今回だけでいいです!
 どうか……どうか愚かな変態女を助けてください!

 私は泣いた。
 辛うじて声だけは何とか抑えて。
 子供のように。
 大の大人が恥ずかしいくらい顔を歪めて泣きじゃくった。
 ドアの向こうの男がちょっと手を伸ばすだけで私の人生は終わる。
 その恐怖に私は絶望して泣いた。

「おい、早く行くぞ。サボりだと思われるだろ」
「……はい、すみません」

 その言葉を最後に足音は遠ざかっていき、人の気配は消えた。
 そして、男たちがスイッチを押したのだろう。
 地下の電気が消灯し、周囲は再び暗闇に包まれた。
「~~~~~~!!」
 そして、それと同時に私は潮を吹いて絶頂した。

 * * *

「はぁ……はぁ……」
 カチャリという無機質な音と共に手錠が外れ、私は解放された。
 24時間経ったらしい。
 再び私は無人の社内で自由になった。
「は……はは……」
 いまだに胸の高鳴りが収まらない。
 紙一重だった。
 あの瞬間、私の人生はあの男の気分に委ねられていた。
 見つかっていたらどうなっていただろう?
 警察を呼ばれた?
 意外と心配してくれただろうか。
 それとも脅迫されたかもしれない。
 私はもう二度と――

「ふふっ、最高っ……!」
 もう二度とこの魅力から逃れられなくなったことを自覚して笑った。

 完


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