友愛の監視セックス 第①話

[小説]短編

「ジンタ、あんたいつ結婚するのよお」

甚太の母親は、最近よく富山訛りのことばで、よく甚太を急かした。

以前は二か月に一度ぐらいの頻度で、ダンボールいっぱいの野菜やコメのおまけに、お小言が書いてある手紙が一通という、可愛らしいものだったのに、先月、甚太が三十五歳の誕生日を、東京で一人迎えたあたりから、露骨に焦り、週に一度くらいの電話を寄越してきた。

「うるさいなあ、おふくろに関係ないだろ」

東京で有名私立の工学部を卒業した幸田甚太は、某大企業のシステムエンジニアとして働き始めてから、既に十年以上が経つ。

甚太は堅実な働きぶりが人事部に認められ、順調に出世したが、見た目と人当たりが悪く、女性社員からは蛇蝎のように嫌われていた。

「低能な女にモテても嬉しくないぜ」

と、エグゼクティブ婚活サイトに登録しているが、甚太はここでも敬遠された。

今は撮影技術が進歩して、猿のような顔の男ですら、美丈夫に加工できるというのに、甚太ときたら、縦に撮っても斜めにとっても、光を飛ばしても、細くしても、肥満体型と脂ぎった肌質を隠しきれない。女性会員に人気が無さ過ぎて、婚活サイトのスタッフも、甚太の扱いに手を焼き始めていた。

「ふんっ。見る目のないバカ女に、相手にされなくても構わないさ」

甚太の収入と肩書、そして貯蓄があれば、静かな郊外の人気物件を、数年と経たずに買いきることもできたが、甚太はあえて、安普請の1DKの部屋を借りていた。

有名進学校から、有名大学とストレートに進学、それから、ブランド力のある会社に就職した甚太はプライドが高かった。

女にバカにされると、すぐにキレて怯えさせてしまい、未だに素人女と付き合ったことや、セックスした経験がない。

そんな甚太は、ムシャクシャするときは風俗にいくか、隣人の性生活に聞き耳を立てるのが、習慣になっていた。

隣人は、マンションの近くの美大生らしく、そのチャラい男がしょっちゅう美人の、しかも毎回別の彼女を連れ込んでいるのだ。

仕事が終わったあと、甚太は家から帰る途中、スマホをチェックした。

婚活サイトから、パーティの招待メールが一通。そして、甚太の個人ページには、相変わらず、おそらくサクラであろう女からの、数件の「イイね」しか表示されていなかった。

甚太は舌打ちして、スマホをポケットに仕舞いこんだ。コンビニで焼き鳥とメシ、カツレツ、そしておでんを買って、一人、家で晩飯をかきこんでいると

ギッバタン。と隣人がドアを開ける音がした。

「へえ、ここがリョウちゃんの家かあ」

鼻にかかった女の声が小さく聞こえた。甚太はテレビを消して、小さな折り畳み式の机にある漫画雑誌を手に取り、ベッドに横になった。隣人は、ベッドを甚太側の壁に沿わせるようにして置いているらしく、壁際に寝転がると、情事のやり取りがよく聞こえた。

「・・・それでね・・・・・・○○が、ちょう面白くてぇ」

「アイツは、やっぱり・・・で、こいつカッコ良くね」

「分かる。それでアレなんか、めっちゃ・・・かわいいー・・・」

バカな奴らは、なんで、「かわいい」とか「すごい」とか、「かっこいい」としか言えないのか。お喋りには興味が無いので、甚太はレンタルビデオショップにでも行くかと腰をあげかけたが、そこで、

「あっ、リョウちゃん。そんなことしちゃダメ」

と、女の甘い声が漏れた。甚太は慌ててベッドに戻った。

やれやれ、やっと始めたか。

「リョウちゃん、彼女いるでしょお」

「もう、別れた」

「嘘、この間もラブホから出てきたって、友だちに聞いたんだから」

「なんだよ。そいつなんでそんな嘘吐くんだよ」

「や、だめえ。今日汗かいちゃったし、くさいよお」

「俺、女の汗のにおいって好きなんだよねえ」

「変態ぃ。あっあっあっ。ホントにだめ。リョウちゃん、お風呂入らせてよお」

「後で良いだろ、そんなん」

しばらく、犬が茶碗から水を舐めるときの卑猥な音が続いた。時間に比例して、女の喘ぎ声が、荒く、大きくなっていった。

ヤリ目で、しかも彼女持ちの男の家をわざわざ訪ねて、抱かれてやるんだから、女ってのはホントよく分かんねえな…心の中で毒づきながら、甚太は、女の喘ぎ声をオカズに、股間に手を伸ばした。

「はあっ…あっリョウちゃん。ゴム…付けてね…」

「ゴムう?置いてねえよ。そんなん」

「え…それじゃあ。やっ!やめてよ!ゴムしてくれないならやらない。イヤ!離してっ話してってばあ」

「うるさいな。ちゃんと外に出すから大丈夫だって」

「でもぉ、それじゃ…あっ」

また、ぴちゃぴちゃと言う、水が跳ねるような音。甚太は、男が女の唇に舌をねじ込んでいる様を想像した。

「はむっむう!」

女の嬌声が一際高くなった刹那、ばちっばちっと、湿り気のある何かを打擲する音が、断続的に響き始める。

「あっあっあっあっ」

それに呼応するように、女の喘ぎ声もリズムを刻み始める。

「どうだ、生のが気持ち良いだろ」

「…でも、でもぉ!」

しばらくのピストン運動の後、男の荒々しい声が聞こえた。

「出すぞ…!」

甚太も、自分が女に中出しする姿を想像して、思うままに放出した。

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