悪戯な悪魔との出会い

[小説]1話完結

「ああ! だめぇ……」

ベッドの上で、体が踊る。

嬌声をあげ、涎を垂らし髪を振り乱す私はまるで人形のよう。

私の上には、鋭い目付きで私を見る悪魔がいる……。まるで逃がさないというように。ベッドの上で快楽に支配されながら意識が飛びそうになる。

なぜ、こんなことになってしまったのか……。

事の始まりは、些細なことだった。

たまたま、お客さんとしてきた彼にたまたま元彼の愚痴を話していたのがきっかけで、彼は気さくで物知りでなんとなく話しやすくいろんなことを個人的に相談していた。

いつも通り、お店に来て帰る間際に

「今度、飲みに行かない?」

そう、誘われた。その時はあまり深く考えず了承してしまった。

この人なら大丈夫だろう、そんな思いがあったのかもしれない。男はみんなオオカミだと、誰かが話していたがよく言ったものだと今なら思う。

来週に行く約束をして、最近飲み会など行ってない私はワクワクしながらその日を待った。いざ、当日になるとなんとなくソワソワして落ち着かなかった。

仕事が終わり、彼と落ち合う。いつも来ているスーツだったが、外で見る彼はなんとなくかっこよく見えた。いつものように軽く雑談をしながら手頃な居酒屋を探す。

「ここにしよっか」

そう言って彼が指さした居酒屋は私の好きな雰囲気の居酒屋で嬉しかった。ガヤガヤした店内、元気のいい店員に連れられ二人席の座敷に通された。彼がいい人なのはいつも話していて分かっていた。いつも私の話をうんうん、と深く聞いてくれていて、ちゃんと思ったことを話してくれるから。今日も元彼のことが忘れられなくて、どうしても夜に泣いてしまうことを相談していた。相談をしていると呑みすぎてしまう……。次第に早くなっていくペースに気持ちよくなりながら彼に鬱憤をぶつけていた。

「それは、しんどいなぁ……。忘れられる良い方法教えてあげようか?」

そう言って、関西弁を話しながら彼はニヤリと笑った。

「え、なに!教えて!」

「ほかの男に溺れること」

「なにそれ、ありえないしー!」

「ふーん……」

酔いも周り、テンションも高くなった私は軽く否定した。その時は面白くなさそうな彼の表情を読み取るまで頭が回っていなかった。彼の手が近づいてくる。

「どーしたのぉーー??」

ほろ酔いになりながら、彼の手の行方を見る。彼は私の手のひらをおもむろに掴んだ。

「そんな男、忘れちゃえよ。俺が忘れさせてやるよ」

そう言って彼は自分の手で輪っかを作り私に言った。

「俺の手の中に、お前の人差し指入れてみな」

私は何も考えず、おずおずと指を入れた。しかし、なんだろうか。彼は笑みを浮かべてこちらを凝視してるだけなのに体が勝手に熱ってくる。彼の指の輪っかに近づくほど熱は強く、体が勝手に感じていく……。

彼の輪っかの中に指を入れた瞬間

「ああんっ!」

思わず指を引っ込めてしまった……。ただ、彼の指示に従い指を入れただけなのに体が勝手に反応してしまう……。彼はどんな魔法を使ったのか困惑しながら彼を見やると、彼は笑って言った。

「やっぱりな。ちょっとした心理テストだよ。お前がMか見極めるためのね」

「俺が忘れさせてやるよ、お前の飼い主になってやる」

そう言って、よろよろの私を連れて彼はバス停に私を引っ張っていく。

ぐいぐい歩く、彼の歩幅は広くて小走りでついて行きながら体重をほとんど彼に預けて歩いていた。私の身体は熱を求めて疼いたままだった。

バス停について、バスが来るまでまだ時間があった。バス停脇には郵便局があり人がちらほら歩いていた。ぼんやりバスを待ちながら立っていると、いきなり彼がニヤリと笑って近づいてきた。

「ちょっ!な、に……」

「んー?確認?笑」

そう言って彼は私を郵便局の壁に押し付ける。手首を抑えられ、腰を押し付けられる。脚で抑えられていて身動きが取れない。逸る鼓動が気持ちを掻き立てる。勝手に息が荒くなる……。

「なんの、確認、よ!」

「お前が俺に感じてるかどうか、まぁその顔を見れば一目瞭然だけどな」

「なっ!////」

じたばたと無駄な抵抗をしてみるがやはり異性の力には勝てない……。

「本当は体が疼いて仕方ないだろう?」

そう言って、何も言えない私に彼はキスをした。

「なに、する、んっはぁっやぁ……」

ぐちゅ、ぐちゅと口内を犯される。今まで感じたことの無い気持ちよさが脳天を貫いていく。両手で抑えていた私の腕を片手で上にあげ、お尻をまさぐる。

「んっんん、やぁっ!だめ、ですぅ」

気持ちいいのを認めたくない……。認めたらなにかが終わる気がして必死で抵抗する泣きそうな私を尻目に、彼の手はお尻を撫で回しついにズボンの中に入ってくる……。

「そんな涙目で嫌がられても説得力ないんだけど。本当は感じてんだろ?パンツ、湿ってるけど」

ああ……。もうだめ……。膝が笑いそうになる、彼の愛撫は止まらない。

パンツの上から、私の蕾を爪で引っかかれる。もどかしいような快感が癖になる、もっとして欲しい、気持ちいい!そんな気持ちが芽生える……。

「物欲しそうな顔して、やらしい女だ。残念ながら今日は時間切れだな。」

そう言って、彼は私の後ろを見やり私は息も絶え絶えで足を震わせていた。

そんな私の姿を見て、彼はまた軽くキスをした。

「お前は絶対また会いたくなる、俺に堕ちるならこれ以上の快楽を与えてやれるよ、会いたくなったら連絡しろ」

そう言って、バスが来たのを見、彼は漆黒の闇に消えていった……。

 

ーーバチン!躰に衝撃が走る。

彼の愛撫が良すぎて、昔の記憶が蘇ってきていた。

「あぁぁあ!」

「何をぼーっとしてやがる。お前は今お仕置き中だろうが。誰の前でぼーっとしてんだ、ああ!?」

「ごめん、なさい……!許してくださいご主人様……」

「お仕置きだな。俺が許すまで絶対イくなよ?」

そう言って、彼はまた律動を早める。私の長い夜はまだ始まったばかりだ。

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