チカン放浪記 第③話

[小説]短編

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俺の故郷は、絵に描いたような田舎町でさ。雪深い土地で、電車なんかワンマンカー。おまけに降りる駅は無人駅ってなワケ。

でも、俺が生まれたころに、町の半分以上占めてた山や田んぼが開発されて、どんどん団地になっちまったらしい。

そのせいで、田舎のくせに通学電車はぎゅうぎゅう詰めだった。どうみても不便どころかバカな話なんだけどさ、電車の本数が増えるのは、俺が故郷を出た後だった。

 

ともかく、俺も例にもれず、そんなぎゅうぎゅう電車に乗って通学してたクチだった。

そんな状況だったけど、嫌じゃなかった。

というのも、俺は毎日、クラスメイトの女の子と同じ電車の同じ車両に乗って通学してたんだ。

すごく可愛いコだった。ちょっと下膨れた顔も良かった。真っ白な肌に、ちょっとだけ赤みがあって、まるで細長いいちご大福みたいでさ。

控えめだけど形の良いおっぱいも良かったし、むちむちの太ももがもっとよかった。

 

でもさ、思春期の男の悲しい話でさ、好き=やりたいんだよな。

俺も、その子が好きだった。で、すっごくやりたかった。

でもさ、そんなにやりたかったら告白して付き合えば簡単な話なのに、俺は意気地がなかったんだ。

 

だから、チカンするしかなかった。

同じ電車に乗って、マスクつけて親父の着古したスーツきて。

せっかくだから、思い出に残る日にしようってんで、彼女の誕生日に実行することにした。

なにせ初めてのチカンだからな。緊張したぜ。

 

 

いつもより早起きして、家を出た俺は、学校までの途中駅で降りた。ちょうど、そこが乗車している人間がぎゅうぎゅう詰めになるぐらいのころ合いだった。

俺はそこの駅のトイレでヒゲをつけて、コートを羽織り、一応パンツも脱いで、そこから親父のスーツを着た。鏡で見ると、普通におっさんだった。見た目には、くたびれたサラリーマンにしか見えなかったな。

 

その日、彼女はいつもどおり、電車のドアの入り口のすぐ横に立ってた。あれ、彼女たちからしたらすぐ降りられるようにって考えなんだよな。

でも、チカンにとってみたらあれが絶好のスポット。

満員電車のなかなら、後ろから覆いかぶさるように囲えるからさ。逃げられないし、座席に座る連中と顔会わせないから、助けも求められないだろ。

 

俺は計画通り、いつもどおりドアの横に立つ彼女の背後にぴったり立った。

普通ならくっつきすぎだろと思うけど、満員電車だからな。彼女もちょっとだけ身じろぎをしたけど、特に嫌がる様子も不審そうな様子でもなかったよ。

後ろから覗き込むと、彼女は文庫本を読んでた。文豪の書いた、退屈なやつさ。

そうすると、なんか腹たってきてさ。

これから俺サマが今からもっと楽しいことをしてやるってのに、お前は! なんてつまらないものを見てやがる!ってさ。

 

そのままの勢いで、俺は彼女の尻を撫でた。

最初は、軽くタッチさ。

あ、ぶつかっちゃって触っちゃった、スミマセンって感じだ。

彼女はびっくりしたけど、そんな様子の俺を見て逆にぺこりと頭を下げた。良い子だよな。

 

けど、そっから俺の性欲アクセルがかかった。

スカート越しに触った彼女の尻は、思ったより柔らかくて、弾力もあった。ペチペチ叩きたくなる、いやいや、吸い付きたくなるような尻だった。

俺はすっかり魅了されちまったってワケだ。

 

俺は手で手刀を作って、尻の割れ目に手を差し込んだ。まるでカードキーを通すみたいに、すっ、と手を上下に動かした。

そんとき彼女が、あっ、て喘いだ。

そう、喘いだんだよ! 彼女はチカンされて感じてたんだ!

俺の興奮度はマックスさ。

 

そのままの勢いで、俺は彼女の太ももを撫でた。さらにパンツを撫でて、中に指を挿れた。

濡れてるなんてもんじゃなかった。電車の中にくちゅくちゅ音が響いてる気がした。錯覚なんだけど、そんぐらい俺にははっきり聞こえてた。

 

俺としては、セックスしてる気分だった。

夢にまで見た真っ白な太ももを撫でながら、好きだ!好きだ!って思いを込めた。

なぁ、お前も気持ちいいだろ?! 男に触られて喜んでるんだろ!?って。

うぬぼれだよな。

ところが中坊の俺のナニはギンギンだった。転がるように電車から降りて、無人駅で空を見上げながら射精さ。

雲よりも白い俺のザーメン。

 

めでたしめでたし、ハッピーエンドって感じだろ?

でもな、後味の悪いオチがある。

 

俺はそのときすっかり有頂天になって、彼女はチカンされて喜んでると思った。

あんなに濡れてたし、少し腰も降ってたからな。清楚な顔してて、スケベめ!俺はお前の一番恥ずかしいところを知ってるぞ! なんて、彼女の後ろ姿見てその日一日はニヤニヤしっぱなしさ。なんなら、もっかいしてやろうかとすら思ったよ。

でもな、彼女は次の日から、電車に乗ってこなかった。それどころか、学校を休んだ。次の日も、また次の日も、な。

聞いた話じゃ、あの子は男性恐怖症になっちまったんだとさ。

それで、電車にも乗れない、学校にも来れないって。

半年ぐらい経ってからかな。親に毎日学校まで送り迎えしてもらう形で、ようやく登校してきた。

明るい子だったのにな、すっかり暗くなっちまって。男性恐怖症どころか、人間不信になってた。

 

最近同級生に聞いた話じゃ、彼女、未だに独身だって。

本当に、申し訳ないことをした。最低だよな。

 

電車チカンは、あれが最初で最後だよ。

頼まれてももう二度とやらないな。

でも、チカンのサガには抗えない。どうしてもチカンがしたくてしたくて、身体が疼いちまうんだ。

週末になると居酒屋によりたくて仕方なくなるだろ。出張するとその土地の風俗に行きたくなるだろ。あれと一緒だ。

だから、決めた。俺はチカンで、アーティスト。女の子に芸術的な前開けチカンをして、よりアーティスティックにチンチンを見せるのが趣味。

俺のナニを見ちまった女の子がおばちゃんになったときに、「あぁあんなこともあったな」って思いだせる程度でいいんだ。UFOを見たとか人面犬を見たとか、そんなモンでいい。

女の子の心に傷が出来るようなやり方は、出来るだけ、たぶん、もうしないようにする。

 

 

……おっと、すっかり話し込んじまった。そろそろ高速バスが来る時間だ。

俺の次の目的? 関西だよ。大阪で遊んだあとに、京都、兵庫、和歌山あたりをぐるっと回ろうかと思ってる。

関東は大体回ったからさ。

関西では、ナニを見せたときのリアクションも違うのかなって思って。へへ。

なんでやねん! なんて言われるかな。それともどつかれるのかな。

あぁ、楽しみだな。チカンされたとき、関西ガールはどんな反応をするのかな。

 

……おっと、バスだ。それじゃあな。また縁があったら会おうぜ。

お前さんの人生に、良きチカン運が巡ってきますように。

 

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