処女探偵アリサのセックスシンドローム 第⑨話

この物語はフィクションです。登場する人物、団体名等、名称は実在のものとは一切関係ありません

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 誰もいない部屋でアリサは手鏡で股間を覗き込んだ。惑う事なき処女まんこがそこにあった。
 指でこすって匂いを嗅ぐ。まんこティッシュの効果なのか、かつてのような鼻がひん曲がる匂いはそこにはなかった。
 ケツ毛ジャングルもシリクレバーできれいに除毛されて、割れ目の中心では肛門様がのびのびと寛いでいる。
 オカンチョウサンをブッ刺された効果なのか、宿便を排出しきったようで近年まれに見るくらい胃腸の調子がいい。
 何だかんだで、私は新堂露夢に調教されていたのではないか?とアリサは思う。
 下劣な言葉を浴びせ続けられたことで、すっかり精神も鍛えられたように感じる。だからこそ、自分は新堂露夢を逆レイプしかける度胸が身についたと言えるのだ。
 もしかしたら、新堂露夢はこの結末を予見していたのではないだろうか。あれだけの調査力を持つ彼のことだ。公安の内偵に気付いていないはずがない。彼の狂気は、燃え尽きる前の花火の美しさだったのかもしれない。
 ただし、整えられた股間とは裏腹に、まんこは我ながら左右非対称でいびつな形だと思う。一度、こっそりオナニーしているナナのまんこを覗いたことがあるが、やりまくりJKにもかかわらず、びらびらもわずかな美マンだった。
 しかし、新堂宗吉は私のまんこが母に生き写しだと言ってくれた。私の父は、こんなまんこに自分のチンコをぶち込んだのだろう。そして、私が生まれた。
 宮藤良介は、コーチだった母・宮藤ミツコに敵わないことを悟ってレスリングから身を引いた、と言っていた。本当にそうだろうか?
 アリサは思いを巡らしながら、電光安寿丸をブラジャーを外したバストに直接当てた。電流が体を駆け抜ける。かつては、自分を失神にまで追い込んだこの刺激も、今や快感を呼び込むための道具だ。
 ナナとの特訓で、新堂露夢に対抗するために自分をマゾヒストに作り替えたとアリサは思っていた。しかし、本来、自分にはマゾヒストの血が流れていたのではないかと思うことがある。
 宮藤良介は、母のマゾヒストの血に気付いてしまったのではないかと思う。祥子に見せたという圧倒的な破壊力でレスリングの師匠である母を組み伏せた時に、母の真の姿を知ってしまったのではないだろうか。
 もちろん、当人は何も語らないので真相はわからないが、新堂露夢の蹂躙にいつしか快感を覚えるようになってきた自分を見ていると、ふと母の血を感じるのだ。
 アリサはまんこを押し広げてみた。中はきれいなピンク色だった。上部にちょこんと鎮座しているクリトリスは、自分も母のように愛する人と生殖活動ができる証である。
 私のこのまんこも、いつの日か誰かが貫通することになるだろう。その時の相手が、父のような男性だったらいいな、とアリサは思った。

 それから一週間後、アリサはキャリーバッグに身の回りの物を詰め込み終えると息をついた。
 まんこティッシュ、名宝タチマチ、塗るコンドームパサー、電光安寿丸、ロープキングダム、オカンチョウサン、シリクレバー・・・見れば、シンドーの遺産がいつの間にか大量に揃っている。
 シンドー産業は摘発を受けて、社長を始めとした経営陣は一斉に逮捕された。
 そして、シンドーの最後を見届けるように、怪物を生み出したけじめをつけた新堂宗吉は息を引き取ったそうだ。死に水を取ったのは新堂露夢だったらしい。
「行くのか、アリサ?」
 宮藤探偵事務所では、良介とナナ、そして祥子とグーンが旅立つアリサの見送りに立っていた。
 あれから、アリサは調査の末、シンドーを告発した葛城レイコの所在を掴んだ。
 自分は行かなければならないと思った。母・宮藤ミツコのもとへ。
 葛城レイコこと宮藤ミツコは、長年の時を経てシンドーへの復讐を果たした。自分は、そのレールに乗っていただけである。今度は、自分から動かなければならない。
「所長には申し訳ないのですが」
「事務所のことは気にしなくていいんだが」
 良介は、自分に寄り添う祥子と、ナナにぴったりくっついているグーンに言った。
「お前たち、いいのか?そりゃアリサが出ていくぶん、うちは助かるけど・・・給料安いぞ」
「構いません。調査は慣れていますので、お役に立てると思います。それに・・・」
 そう言って良介に一歩近づく。
「私は、お金よりも兄弟よりも大切なものを見つけたのかもしれません」
 祥子の流し目に身を退く良介と彼女の間に、ナナが割り込む。
「パパ、この人、老けて見えるけど17才なんだよ。私とタメだよ?セックスしたら淫行だよ!」
「いえ、私はセックスよりスープレックスを要望します」
「ヘンタイかよ・・・」
 そして、グーンも良介に大きな股間をアピールしつつ喜びを表す。
「僕もOKでーす!ナナさんの傍にいたいでーす!そして、いつか童貞を奪ってほしいでーす!」
 2倍くらい体格が違うグーンを付き従えながら、ナナはニヒルにポーズを決めた。
「・・・妙なやつに惚れられちゃったな。これも美少女の宿命か」
「ナナさんのソックスの匂い、サイコーでしたー!」
「そっちかい!」
 何だかんだで、すっかりなじんでいる祥子とグーンの姿が、アリサには微笑ましかった。彼らも宮藤ミツコの卵子から作られたアリサの血縁であるのだ。
「新堂露夢はあれからどうした?」
 祥子に問いかける良介の言葉に、アリサの動きがぴたりと止まった。
 二度と聞きたくない名前ではあるが、気にならないと言えばウソである。
「姿を見せません・・・シンドーが逮捕された後、彼も公安の調べは受けていたようですが、その後の行方は私にもつかめていません」
 そう言うと、祥子はアリサの方を見た。
「でも、彼が行くべき場所はもう明らかでしょう?」

 キャリーバッグを引きながらアリサは道を歩いていた。
 死んだと思っていた母が生きていた。名前も顔も変わった母は、別人として娘の前に現れて親子の名乗りさえ行わず、アリサに何かを託した。
 その何かの真意を母から直接聞かなければならない。
 道中で新堂露夢と饗宴を繰り広げた工場跡地を横切ると「○○保育所建設予定地」との看板が掲げられる中で、トラックやクレーン車が立ち並び解体作業が行われていた。施工者の欄に「シンドー産業」の文字が見える。敷地の広さから、きっと立派な保育所が建設されることだろう。
 アリサは、愛のない冷たい試験管から作られた無機的な命が、温かさに包まれた保育所で愛を育んでくれることを祈った。
 思い出に浸りながら歩いていくアリサの前に、朝焼けを受けた人影がぐんと伸びてきた。
 それは、新堂露夢だった。
 虚ろげな表情の露夢は何も言わず、アリサを見ていた。そして、アリサも足を止めて彼を見つめた。
 葛城レイコの卵子から作られた人造人間。シンドーが告発されたことにより、彼もまた、その数奇な背景から、世間の好奇にされされるに違いない。
 しかし、同情する余地はない。逆らえない自分の運命に彼が取った手段は、単なる蛮行だったからだ。
 アリサにとって露夢は未だに忌むべき人間の範疇にいた。たとえ、彼が自分の血を分けた弟だとしても。
 アリサは、露夢から目をそらした。かける言葉なんて何もない。そして、障害物を避けるように彼の脇を通り過ぎた。
「僕も、ついていっていいかな?」
 すれ違いざまに露夢は言った。しかし、アリサは歩みを止めなかった。もう、罰を受けた露夢と関わる理由はないのだ。
 しかし、露夢は去り行くアリサの背中に向けて声を張り上げた。
「母に会えるなら、会ってみたいんだ」
 アリサの足が止まった。
 今更、血を分けた兄弟だとわかっても何の感慨もわかない。私たちは変態行為の辱めと言う最悪な形で出会い、そして、そのまま終わろうとしている。
 しかし、葛城レイコは新堂露夢の母親となって彼を育てた。自分の卵子から作られたとはいえ、そこに親子の絆はないはずである。
 だが、彼女がシンドーを告発するまで15年をかけたのだ。いくらなんでも長すぎる。もっと早い段階で新堂宗吉から動かぬ証拠は得ていたはずであるにもかかわらず。
 本当に葛城レイコにとって、新堂露夢もまた復讐の対象だったのだろうか?彼がモノがわかる年齢になってから私と引き合わせたことの意味は、当人にしかわからない。
 けれども、これは不幸な出会いなのだ。今の私には、新堂露夢を憎むことしかできない。
 そのまま終わるべきなのだ、赤の他人として。でも・・・

 歩みを止めたアリサの背中を露夢はじっと見ていた。
 よく見れば背筋の伸び方が葛城レイコと似ている気がした。
 それは許されないことなのだろう。兄弟であることは関係ない。一人の女性を散々辱めただけだ。
 血のつながりがあるとわかって訪れる感情は、愛情ではない、むしろ憎悪だ。
 愛に囲まれて生まれ育ったアリサと自分とでは、血縁では越えられない壁が聳え立っている。
 僕は僕として、シンドーの後継ぎとしてこれからのシンドー産業の事を考えなければならない。失墜したシンドー産業の立て直しは容易なことではないだろう。忌まわしきコンドーム工場跡地を保育園にする決議を、逮捕された父に代わって昨日に行ったばかりだ。
 もう、アリサと関わっている時間などないはずだし、彼女とは会ってはいけないはずだった。
 これからも僕は一人で生きるし、家族などはいらない。祖父が亡くなった今、自分は改めて天涯孤独の身になったのだ。
 だが、露夢にはわからないことがあった。自分とアリサは敵として巡り合った。そして、アリサの何事にもくじけない強い精神力と確固たる信念は、確実に彼の冷たい心に柔らかな日差しを与えていた。
 もし、母がそれを期待して、僕たちを引き合わせたのだとしたら・・・。
 しばしの沈黙の後、アリサが振り向いた。朝日を浴びたその表情は険しいままだった。
 だが、その視線はまっすぐに露夢を捉えていた。アリサの厳しい視線に露夢の心臓は高鳴った。
 やがて、アリサは低い声で言った。声色は押さえているが、露夢の大きな耳にしっかりと届く力強い声だった。
「何してるの?早く来ないと電車に乗り遅れるわよ」
 露夢は大きく頷くと朝焼けに向かった駆け出した。朝日を受けたその表情は、まだ見ぬこれからの未来が描かれているように明るく照らされていた。

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