登場人物
宮藤アリサ 宮藤探偵事務所の女探偵。アラサーで独身。
宮藤良介 アリサの叔父であり、宮藤探偵事務所所長。
宮藤ナナ 良介の一人娘で、援交が趣味のJK。
新堂露夢 高校生。生徒会長を務める頭脳明晰な少年。
祥子 露夢に付き従うボディーガードの女性
グーン 露夢に付き従うボディーガードの男性
葛城レイコ アリサに露夢の調査を依頼する初老の女性。
宮藤海斗・ミツコ アリサの亡き両親。
整形かな?と宮藤アリサは、目の前に座る女性のやや不自然に整えられた目鼻立ちの位置を見て思った。
「この男のことを探ってほしいんです」
古びた喫茶店の片隅で、女が出してきた写真に映っていたのは白いカッターシャツ姿の少年だった。
宮藤アリサは、その写真を見て「若いな」と思った。見た目年齢で妹のナナと同じ年くらいだろうか。
アリサは探偵である。そして、広い肩幅をすぼめるようにして座っている初老の女性が今回の依頼人である葛城レイコだ。
「どう言ったご関係なんですか?差し支えなければ」
葛城レイコからこの少年の情報を取材しつつ、アリサはそれとなく尋ねてみた。母と息子と言っても通用する年齢差である。浮気調査などはよく受けるが、これは全く別の関係を思わせた。
すると、レイコは一呼吸置いてから告白をした。
「レイプされたんです、この少年に」
アリサが思いを巡らしながら事務所に戻ってくると、JKがオナニーをしていた。
「うっふんあっはん、ナナ、こんなの初めて!とんでっちゃう~」
アリサは無表情でJKの横を素通りすると、自分のデスクについてPCを開いた。
「あ、お姉ちゃん、おかえりー」
「家の中ではパンツ履きなさい。ったく、今日も援交の練習?」
「うん、久しぶりだからね。演技チェックしてたの。イッタふりしてボーナスゲットだぜ!」
ゆるふわショートで黙っていればかわいいこのJKは、宮藤ナナ。宮藤探偵事務所所長の一人娘だ。
趣味と実益を兼ねて援交に精を出しつ出させつの現役女子高生17歳。
「でも、これ、すごいよー。マジイキしそうになっちゃった」
ナナの手の中には、8本の触角が蠢く怪しい大人のおもちゃが握られていた。
「名宝タチマチ。たちまち、あなたをイカせますだって。お姉ちゃんも使ってみる?」
「いらんわ!」
先ほどから姉と言われているが、アリサとナナは血がつながっているわけではない。年の差もおおよそ一回り違う。
ただ、物心ついた頃からアリサが傍にいたナナにとってはお姉さんと等しい存在であり、アリサにとってもナナは妹のような存在だった。
また、うっふんあっはんとやり始めたナナを放っておいて、アリサは入手した情報をデータベースにまとめながら、レイコとの会話を思い起こしていた。
レイプならば、警察に相談するべきではないか?とのアリサの忠言に、レイコは事件にする気はないと答えた。
この少年のことを知り、できれば、なぜ自分をレイプしたのか明らかにしてから改めてその後の行動は考えたい、とのことだった。
「ただいまー。お、ナナ、またオナニーかい?」
「あ、パパ。おかえりー」
二人の背後から声をかけてきたひょろ長い体躯で天然パーマの掘りの深い赤シャツオヤジが、所長である宮藤良介である。
良介は、買い物袋をテーブルに置くと、パソコン作業に没頭しているアリサを覗き込んできた。
「所長、またパチンコですか。仕事してくださいよ」
ツンと来るメンソールタバコの匂いに顔をしかめながら、アリサは苦々しく言った。
宮藤探偵事務所は、アリサの叔父である宮藤良介が所長を務めている。もっとも、事務所と言っても、探偵は彼と彼女の二人だけだ。
本来は弁護士志望のアリサは、司法試験の勉強をしながら良介の仕事を手伝っている。女性探偵には相談しやすいと言う事で同性からの依頼が多く、今では宮藤探偵事務所の屋台骨を支えているのはアリサの方だったりする。
「パパはね、パチンコが仕事なんだよ」
「誰が、パパですか!」
がっしりとした体格で優しいまなざしだった父の面影は良介からは感じられない。私のパパは一人だけだ、とアリサは思う。
今は亡きアリサの父の弟が良介にあたる。
優秀な弁護士だったアリサの父親は、彼女が小学生の頃にアリサの母親とともに自動車事故でこの世を去っていた。それ以来、アリサは父の弟である良介のもとに身を寄せていた。
両親の死には不可解な点が残っていた。抱えていた何らかの案件が関係していたのではないか?と警察の調査なども入ったものの、良介は「あれは単なる交通事故だ」と言って憚らなかった。
やがて、事件は風化し、アリサも良介のもとで成人になった。アリサはいつしか父の遺志を継いで弁護士を目指していた。
しかし、現実は甘くない。司法試験に2度落ちて、今は宮藤探偵事務所の仕事で食いつないでいる日々である。
「家出人捜索か何かか?ああ、このシャツは○○高校の制服だね」
良介はモニターの脇に貼られている少年の写真を見て指摘した。
アリサにとって良介は父親代わりでもある。親を亡くして途方に暮れていた自分を引き取って養ってくれたことには感謝している。しかし、人間的には何一つ尊敬していない。学生時代は、ちょっと名の知れたレスリングの選手だったらしいが、今では、パチンコにハマって奥さんに逃げられるようなクズ男だ。
ただ、時折、本業の探偵らしく、自分には気づかない盲点を指摘してくることがある。その時は、素直に感服する。
葛城レイコによると、この写真は去り際に油断している隙をついて撮影した一枚だそうだ。その割には、顔もファッションも明確に映っていることは気になるが。
とりあえず、○○高校をしらみつぶしにあたってみるか、とアリサは思った。
そんなアリサの背後では、バカ親子がバカな会話をしていた。
「ナナ、援交もほどほどにしておけよ。小遣いに不自由させているつもりはないんだけどな」
「いやいや、JKで商売できるのも今の内だけっすからねー。ガッツリ行かせてもらいますよ」
会話の内容はアレだが、仲のいい親子である。そこには、確かな血のつながりがある。
この二人は、アリサを家族として迎えてくれてはいるが、彼女にとっては他人である意識をどこかで拭うことができていなかった。
アリサの母親は、名門の体育大学でレスリングのコーチをしていた。その時の教え子の一人が良介だったそうだ。良介を仲介にして、父と母は巡り合ったらしい。
自分がこの世に生を受けるきっかけを作った良介には感謝している・・・が、やはり自分が家族と呼べるのは亡き父と母だけだ。
アリサは、ため息をつくと呆れながらナナに言った。
「だいたい、そんなにお金貯めて何に使うの?」
お金とセックスには何の執着もないアリサと、好奇心もりもりなナナは正反対の性格だった。兄と弟の子供でこんなに差が出るものなのか。高校時代は、ずっと本ばかり読んで過ごしていたアリサからしてみると、ナナは異星人のようだった。それ故に血のつながらなさを如実に感じてしまう。
すると、ナナは名宝タチマチをアリサに突き付けながら得意そうに答えた。
「この製造元の株を大人買い。こんなの作る会社だもの、きっと青天井間違いなしさ!」
「えらい!さすが我が娘。その儲けでパパを養ってくれ!」
「パパはパパで勝手に野垂れ死んでねww」
明るく笑い合う親子の姿を見て、アリサは亡き父を思い出してちょっと寂しくもなったりする。
ただ、実の娘と分け隔てなく接してくれる良介と、実の姉のように慕ってくれるナナの存在は、決して悪い心地はなかった。
睦まじく会話している二人を横目で見ながら、アリサは何気にナナが傍らに置いた名宝タチマチを手に取った。
スイッチを入れると、名宝タチマチは8本の触角をグイングインと不規則に動かし始める。
こんなものをまんこに宛がって気持ちいいのかしら?とアリサは怪訝に思った。若い頃に好奇心でオナニーをしたことはあるが、痛いやらくすぐったいやらでろくなものじゃなかった記憶がある。そもそも、オナニーなんかしなくても人生には何の障害もない。
アリサは、名宝タチマチに貼ってあるシンドー産業と明記されたレッテルを見ながら、オナニーグッズだか何だか知らないが、たぶんろくな会社じゃないだろうと思った。
そんなアリサの心に絡みつくように、名宝タチマチは触角を不気味に蠢かしていた。
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